TAW Thoroughbred Aftercare and Welfare

第22回 兵庫 神戸市・摩耶山天上寺 摩耶詣祭 その1

兵庫県神戸市・六甲山地に連なる摩耶山には、旧暦2月初牛(はつうま)に馬を連れて山上にある摩耶山天上寺にお参りする風習が古来よりあった。「摩耶詣(まやもうで)」という。春を告げる関西の奇習・奇祭として今も続いている。どんな馬祭事なのだろうか?

天皇家ゆかりの古刹

神戸港を見下ろす摩耶山は,六甲山地の中央に位置する標高700mの山だ。神戸市民の憩いの場所として知られ、山頂付近の展望台「掬星台(きくせいだい)」から一望できる夜の景色は日本三大夜景のひとつとされている。

山頂にある摩耶山天上寺は1300年以上前に開創された古刹で、空海が摩耶夫人(お釈迦様の母親)の像を安置したことでも知られている。摩耶山の名前もこの像から来ている。第36代孝徳天皇、第65代花山天皇、第106代正親町(おおぎまち)天皇が勅願寺・御願寺とし、江戸時代は三代将軍徳川家光が摂津(今の兵庫県)の護国寺として選定した。天皇家、将軍家をはじめ、庶民に至るまで、昔から広く信仰を集めてきた寺院だ。

寺院へと続く摩耶山天上寺の山門。

釈迦の母・摩耶夫人を本尊とする関係もあり、安産の腹帯の発祥地としても知られる。

寺院の近くには夜空の星がきれいな場所として掬星台がある。

春の訪れを告げる奇祭

寺の行事の中でも、毎年3月の最終土曜日に行われる「摩耶詣祭(まやもうでまつり)」は馬祭事としても有名だ。江戸時代以前から旧暦2月初牛の日に近隣の人々が馬を連れて天上寺に参詣する風習があったという。馬を代表とする家畜全体の無病息災と一家の安全・繁栄を祈願するためだ。この風習が祭事の元になっている。

古くから続くこの祭りも昭和の初めには廃れてしまい、寺の関係者の間でひっそりと続けられる「奇祭」となってしまった。平成に入り、復活を望む声が高まるとともに、近くの六甲山牧場の協力もあって1993年に再開された。その後1995年阪神淡路大震災での中断を経て、2002年に「摩耶山の春の山開き」を兼ねた行事として定着した。今では一帯の春の風物詩となっている。

毎年、摩耶詣祭には、僧侶や修験道の僧など多くの人々が参加する。

掬星台で行われる春山開きでは、関係者が一堂に会す。

家畜代表として近くの六甲山牧場の馬が参加する。