第21回 静岡 浜松市・西見寺 厄除け乗馬
馬頭観音像は一般に、宝冠に馬の頭を乗せ、怒りに満ちた表情をしている。そのため民間信仰としては馬の守護仏とされ、馬頭観音を本尊とするお寺では、実際に馬が登場するお祭りもある。そのひとつ、静岡県浜松市・西見寺で行われる「厄除け乗馬」を紹介する。
徳川家康ゆかりの寺
曹洞宗圓通山西見寺は、室町時代に建てられ、広く地域の信仰を集めるお寺だ。馬頭観世音菩薩像が祀られている寺でもある。古くは徳川家康が武田信玄と戦った「三方ヶ原の戦い」の際、この観音像に武運と馬の健康を祈願したといわれる。
毎年3月初旬に開催される大祭は「西見寺の初牛」として近隣では知られている。この日に子供を馬に乗せ、観音堂の周りを一周すると、元気な子に育つという。「乗馬祈祷」あるいは「厄除け乗馬」と呼ばれる。その昔、農耕馬が集まって厄落としをしたり、子供の健やかな成長を祈願したことに起源があるという。
絵馬を奉納して家内安全を祈願する日でもある。絵馬といえば、普通は裏に願い事を書いて納めるものだが、ここでは何も書かない。書かずに願いだけを込めてお寺に納めるのだそうだ。

境内の鳥居の前で馬装。

境内に設けられた厄除け乗馬の受付。

祈願され、お寺に納められた絵馬
引退馬の生かし方
引き馬の背に小さな女の子が乗っている。完全地元密着型のこじんまりとしたお祭りながら、近隣では春を告げる風物詩となっているようだ。
馬は近くの乗馬クラブが貸し出している。この乗馬クラブには、腰を悪くして、通常の営業に使うには厳しい馬がいた。普通なら業者に渡しておしまいとなるところだが、なんとか生かす道はないか、オーナーは考えた。そこで思いついたことのひとつが、「西見寺の初牛」。1回1000円の引き馬で子供を乗せてお堂を回るだけなので、乗馬クラブで人を乗せることを考えれば、馬への負担は少ない。普通の引き馬に比べれば安くはないが、縁起物でもあるのでみんな気にせず払っていく。
引退馬を生かす道として、馬祭事に使っていくことは大変有用であると感じた。これからも続いてもらいたい。
子供を乗せて引き馬。馬はとてもおとなしい。
幼児は親子で乗ることもできる。

馬頭観音堂を引き馬で一周することで厄除け終了となる。