TAW Thoroughbred Aftercare and Welfare

第8回 東京都府中市・大國魂神社 くらやみ祭り その2

普段は車が行き交う都会の道路に馬が現れた。観客のどよめきをよそに悠然と道を進む馬たち。古式装束に身を包んだ乗り手とともに、その背には見えざる神も乗せている。

馬は神様を乗せた御神体

時刻は夜の7時を回った。一部の馬はメイン会場となる旧甲州街道のスタート地点へと直接馬運車で向かった。

残った馬たちの周りには、スタッフの学生5〜6人がついている。さらにその外には、祭り半纏をきた関係者が、ロープで馬と学生を囲む。一行は総勢20人を超える。

競馬場を出て、民家の集まる一角を順路に沿って練り歩く。この場合の馬は神様を乗せたご神体であり、お神輿のようなものだろう。家から出てきた人たちが門の前で一行を見守る。

途中、一件の家による。注連縄が張られた庭には、お清めのお酒なども用意されていた。一行はここでひと休み。馬たちも意外に落ち着いた様子で休んでいる。

しばらく休んだ後、時間調整をしながら民家が密集した小路を抜け、府中街道へ。さらに進んで旧甲州街道との交差点へと向かう。

馬を囲い、関係者がグループで街中を進む。

駈け抜ける神馬たち

夜8時。乗馬苑からそれぞれ別の場所へ散った一之駒から六之駒が再集合。乗り手は柳で作った神事用の鞭を渡され、始まりを今や遅しと待っている。道の両側には、大勢の観客が立錐の余地もないほど詰めかけ、スタートとゴール付近は地元警察や祭りの関係者でごった返している。信号は消されているものの、商店の灯りや街灯は道路を照らしている。暗いことは暗いが、人の顔が見えないほどではない。

一之駒が駈け出した。ゆったりとしたキャンター。蹄音が心地よく響く。スタートからゴールまでは150mほど。これぐらいのスピードが、安全上もちょうど良い。観客から拍手や歓声が沸き起こる。

続いて二之駒。間隔をあけて三之駒。続いて四之駒。スタート地点ですこし頭を持ち上げてかかる姿勢を見せた馬もいたが、乗り手がうまく押さえ込んでゆっくりと駈け抜けた。

カメラを向けるが、いつもと勝手が違う。街灯の灯りだけではさすがに光量が足りない。フラッシュをたくわけにもいかず、撮影には不向きな状況。致し方ない。

6頭が150mを3往復。全馬無事に走りきった。大役を終え、乗り手は、みな満足そうな笑みを浮かべている。普段は誘導馬として働く元・競走馬たちも、往時を思い出したのか、誇らしげに見える。

夜の街道を乗馬苑へと帰っていく6頭と関係者。後ろ姿が闇に溶けこんでいく。大勢の観客で騒然とした中、馬の周りだけは不思議と静かだ。蹄の音しか聞こえない。この季節、1000年以上続いた音だろう。確かな馬文化の継承が今年も行われた。

出走を待つ馬と関係者たち。街の灯りに照らされている。

夜という普段と違う環境にも関わらず、馬は落ち着いた様子で道路を進む。