第25回 千葉 人見神社 神馬奉納儀式 その3
頂上にある拝殿前に馬がやってきた。人々が見守る中、神馬役の馬と世話役一行が拝殿にあがる。全国的にも珍しい神馬奉納儀式が始まる。
神に捧げられた馬
最初は、五穀豊穣・海の安全を祈願する真竹を担いだ世話役8人が拝殿にあがり、神棚の前を右回りにひと回りする。続いて拝殿前に下がっていた3本の「本坪鈴(ほんつぼすず)」のうち真ん中の1本が外される。残りの2本は左右に開かれて、上部で結ばれる。神馬を受け入れる準備ができたようだ。
鼻竿に繋がれた神馬が口取り役の世話人4人とともに拝殿前の鳥居に現れた。参道に塩が撒かれ、清められる。一行は一気に拝殿にあがる。拝殿の中に馬がいるのは奇妙な光景だが、同馬に動じる気配はない。中の様子がわかるよう、脇の欄干からカメラを構える。神棚の前を右回りに2周する。馬は大人しく誘導されるがままに動いている。
拝殿に直接馬をあげる儀式は寡聞にして知らない。拝殿前で馬が祈祷を受ける儀式はよく見るが、中にあげるというのは珍しい。神と馬と人の距離がずいぶんと近い。なんともユニークな馬神事だ。
神主さんが十字に組んだ御幣を持って現れ、世話人の一人に渡す。御幣は馬の背に結び付けられる。これで名実ともに「神の馬」となるのかもしれない。
頂上の拝殿前に馬が現れた。

馬は世話役とともに拝殿にあがり、中を2周する。

拝殿上の儀式を終え、御幣を背に結ぶ。
村祭りの原風景
ふもとの鳥居の前には、3台の山車(トラックの荷台に作られている)、1台の立派なお神輿が並び、大勢の人が集まっていた。頂上での儀式を終えた神馬も馬運車で移動して、近くに繋がれている。
鳥居前の石段に大きな段ボール箱が用意された。
「これから餅まきを行いますので、前の方にお集まりください」
アナウンスがあった。集まった人たちのお目当てはこれだった。
神様からの縁起の良いお裾分けということらしい。餅がまかれると争うように手が伸び、5分としないうちに用意された分がなくなった。その光景を見ながら、いかにも村の祭りといった雰囲気に頬が緩んだ。
餅まきが終わると、御幣を背負った神馬が石段前の道路に現れた。後に真竹、山車、お神輿が続く。地元の人がそれらを取り囲み、一体となって道を進む。家の軒先にも人が出て、一行を見守る。
一連の神事には村祭りの原点を見る思いがする。素朴で観光化されていない。取材に対しても特に規制はない。カメラを構えた人は多いが、譲り合って撮影している。
その昔は各地の神社で似たような光景が見られたはずだ。中にはこうして馬が神馬となり、祭事を先導することもあったろう。この先も続いてほしい。

神馬を先頭に行列は進む。

神馬の後に続くお神輿。

行事を終えた神馬役の馬。世話役を含め、ホッとした様子が伺える。