第20回 埼玉・東松山市 上岡馬頭観音 その3
例大祭の日には神馬(しんめ)が欠かせない。この日のために珍しい白毛の元・競走馬が準備されている。普段は馬のいない神馬舎が開けられ、仏事とともに神馬が迎えられる。一方、妙安寺の本堂では次の仏事の準備が進んでいた。
白毛の神馬
お堂の脇には馬房があり、人が集まっている。ここも特に規制されているわけではないので、見に行ってみると「小檜山さん!」と声をかけられた。知り合いの馬関係者で、11時の仏事で神馬を引くのだそうだ。
馬房には白い馬がいた。聞けば元・競走馬で、競走馬名は「ユキンコ」といった。残念ながら5戦して未勝利だが、所属馬登録を見ると「白毛」と記載がある。神馬といえばたいていは芦毛馬で、白毛馬は珍しい。
馬装の様子を見ていると、びっくりするぐらい大人しい。芦毛や白毛の馬の血統は気性的に難しい場合が多く、神馬のように大勢の人前に出すのはなかなかたいへん。どこの芦毛の神馬も多かれ少なかれ苦労しているとよく聞く。その点でもこの馬は珍しい。

神馬の馬装をされる白毛の元・競走馬「ユキンコ」。
仏事が終わると、神馬舎に入る。
往時のにぎわい
妙安寺自体の本堂は、観音堂から少し離れた位置にある。法要では馬たちと僧侶の一行が、本堂から観音堂まで行列しながら進むという。「御練り歩き」という仏事だ。
行列に参加する馬は一旦本堂に集まるというのでそちらへ向かった。そこでは「マルシェ(市)」が開かれ、馬関係のグッズなどが売られていた。
「寒いでしょう。飲んでいってください」
本堂の前で、関係者が甘酒を振舞っていた。寒さで凍える身にはなんともありがたい。甘酒をすすっていると、見知らぬ老人から話しかけられた。
「わしはもう80過ぎだが、小学生の時に見た光景はこんなもんじゃなかった。バスが何台も来て、馬ももっとたくさんやってきて、押すな押すなの大混雑じゃった」
遠い目で往時を懐かしむ。
当日は人手をあてこんだ屋台が並び、様々なものが売られていたそうだ。マルシェなどはその名残かもしれない。

妙安寺本堂までの参道では「マルシェ(市)」が開かれていた。

観音堂前の広場では絵馬だけでなく、だるまも売られる。