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第20回 埼玉・東松山市 上岡馬頭観音 その1

時折遠くで馬の嘶きが聞こえる。「馬頭観世音菩薩」と書かれたのぼり旗がたなびく境内は多くの人で賑わっている。本日2月19日は恒例の「上岡馬頭観世音・例大祭」がここで行われる。祭りの模様をレポートする。

馬頭観音の由来

埼玉県東松山市上岡にある「曹洞宗慈雲妙安寺」は「上岡馬頭観世音菩薩(通称『上岡馬頭観音』)」で知られる。建立は約400年前だが、馬頭観音自体の縁起はさらに古く、約800年前の平安末期まで遡る。

源平合戦が華やかなりし頃、瑞慶という僧侶がいた。京都の鞍馬寺にいた源義経と一緒に修行した、いわば学友だった。その後義経は奥州・平泉に渡り、やがて挙兵して木曽義仲を討った。この時にかつて名将たちが出陣に及んで奉じた「黄金の尊像」と呼ばれる仏像を義経も奉じていた。義仲討伐後、義経はこの尊像を手元に置くのは恐れ多いとして、学友だった瑞慶に預けた。

その後義経は兄・源頼朝の不興を買って奥州に落ちのびた。それを聞いた瑞慶も尊像を返そうと後を追ったが、追いつけず、今の東松山の地で「尊像を安置せよ」という観音様の夢のお告げを聞き、「福寿庵」を創建。同時に馬頭観音の本尊を自らの手で作り、「黄金の尊像」を本尊の中に納めて祀ったという。それが「上岡馬頭観音」となった。

本尊として馬頭観音を納める妙安寺の観音堂。

境内には他にも様々な観音様の像が並ぶ。

馬のお守りとしての絵馬

やがて馬頭観音を管轄するかたちで妙安寺が建立された。「馬の観音様」として関東一円から東日本まで、馬関係者らの信仰を集め、今に至っている。もともとこの上岡は駿馬の産地として鎌倉時代から知られた、馬とは縁のある地域でもある。

例大祭となる2月19日は「絵馬市」が開かれることと、「馬の観音参り」などの行事が行われることで特に人が集まる特別な日となった。

絵馬市も国の選択無形文化財に指定されるほど、伝統のある行事だ。多くの馬関係者が馬体安全、厩舎繁栄などのご利益を求め、一枚一枚手描きされた絵馬を手に入れるために訪れる。ここの絵馬は、願い事を書いて納めるものではなく、厩舎の入り口などに絵馬自体を飾って、お守りとするものだった。

いろいろなデザインの絵馬。すべて手書きだ。

2月19日の例大祭には多くの人が絵馬を求めて集まる。