第19回 愛媛・菊間町 菊間祭 その3
菊間祭当日の朝。境内は数台の神輿や山車などとそれらを囲む氏子たちでごった返している。11時には加茂神社を出て、神輿渡御の神事が始まる。その前に行われるのが「お供馬の走り込み」だ。町内の子どもたちによる勇壮な儀式が始まる。
華麗な走り
「お供馬の走り込み」当日。時刻はまだ7時だが、馬場となる参道は綺麗に整地されている。両側の埒には人々が集まり出し、出店も出ている。
8時過ぎ。参道のスタート地点には人馬が集まっている。
「馬主は○○さん。騎手は○○さん、○歳、小学○年生です。」
一頭一頭アナウンスされる。乗子はもちろん、馬主の名前も告げられる。馬を参加させること自体、馬主にとっても名誉なのだ。
最初の馬が放たれた後、次々と馬が駆けていく。多い子は5回も6回も乗る。必死の形相で馬を追う子は今年初めての参加なのだろう。埒沿いに並んだ人たちが盛んに声援を送る。成人の儀式でもあるので、見守る視線は優しい。町をあげてのイベントとして一体感がある。ファインダー越しにもそれを感じる。ゴールを過ぎるとどの子も満面の笑顔。中には両手を広げて観客にアピールする子もいる。
次々と馬場を駆けていくお供馬たち。

多くの観客で賑わう参道の馬場を疾走する。

乗馬に慣れた子は手綱を放して観客にアピール。
伝統を紡ぐ
「お供馬の走り込み」を取り仕切る組織に「菊馬会」がある。子供たちの乗馬の指導もしている。スタッフの一人が話をしてくれた。
「昔は『嫌がる子を無理やり乗せて…』みたいなところがありましたが、それでは今の子たちは乗ってくれません。体験乗馬から初めて行事で走れるところまで、やさしく指導しています」
ここには重要な示唆がある。
行事として伝統があるほど、それを守りたいという思いと、続けるために時代に合わせることも必要という思いが、しばしばぶつかる。各地の馬祭事を取材しているとよく聞く話だ。中心となる人物は、柔軟な発想で両者の言い分を聞く必要がある。その点で菊馬会はうまく対応しているように思える。こうして子供たちの技量を見極めた上で、どの馬に誰を乗せるか、決めるのだそうだ。事故を防ぐ大きなポイントだろう。
子供がからむ馬祭事は、馬も人も安全面での配慮が第一だ。これが可能になってこそ伝統が守られる。菊間祭がこれからも続けられることを願ってやまない。

勢揃いした乗子たち

馬に触れる幼児。馬とともに成長していくはずだ。

身近に馬のいる風景があることが馬祭事を存続させる。