第19回 愛媛・菊間町 菊間祭 その1
愛媛県今治市菊間町は古来より馬と深いつながりのある土地柄だ。それゆえに代々引き継がれてきた馬祭事がある。地域密着型の馬が関わる祭り・菊間祭だ。どんな馬祭事か紹介しよう。
起源は京都にあり
菊間町浜の小高い丘に建てられた加茂神社。創建は定かではないが、縁起は平安時代にあるといわれている。当時、菊間町一帯は「菊萬庄」と呼ばれる荘園だった。1090年頃、時の朝廷から京都の上賀茂神社に与えられ、同社の土地となった。
1093年、堀川天皇によって宮中行事としての競馬(くらべうま)が、上賀茂神社で行われた。競べ馬は2頭の馬によるマッチレースで、全部で10レース行われる。出場する20頭の馬には同社が所有する荘園名が付けられた。この第17番目に「伊予国菊萬庄」の名前がある。菊間町の加茂神社は、上賀茂神社の菊萬庄社領地保護のため建てられたのではないかといわれている。その意味で、馬や競馬とは深い関係のある神社だ。

愛媛県今治市菊間町にある加茂神社。
境内には神馬像も設置されている。
馬を駆る祭事
毎年10月の第3日曜日、加茂神社例大祭が行われる。当日は、関係する神社から神輿が集まり、町内を練り歩く神輿渡御(みこしとぎょ)と呼ばれる行事が行われる。その際に行列に参加し、御旅所(神様が休む場所)までお供をする神馬とその乗子(騎手)を「お供馬」と呼んだ。神馬は町内で飼われている馬が、乗子は1歳から15歳までの町内の子供たちが務めた。
神輿渡御が始まる前、彼らは祭りの衣装に身を包み、同じく祭用の特別な鞍や装飾具で馬装された馬に乗り、境内の参道300mを一気に駆け抜ける祭事を行う。これを「お供馬の走り込み」と呼ぶ。古文書によると1501年には「加茂の馬場」という記述が見られ、境内で行われていたと推測されている。600年以上の伝統がある祭事だ。1965(昭和40)年に愛媛県の無形民俗文化財の指定を受ける。菊間祭の中でも最大のイベントとなっており、何日も前から準備が進められる。

境内の参道を使った馬場。

祭用の馬具で装飾されたお供馬。

乗子となるのは町内の子供たち。