TAW Thoroughbred Aftercare and Welfare

第17回 長野・木曽 田立花馬祭り その2

「花」で満たされた鞍を背負った花馬と行列をなす地元の関係者や子供たちがJR田立駅前の広場を出発する。目指すは2km先の五宮(いつみや)神社。お囃子が響く中、独特の歩様で一行はゆっくりと進む。沿道では地元の人たちが行列を見守る。

行列は進む

昼12時半。出発時間となる。総勢約80人。宮司さんを先頭に、五宮神社に由来する五色の幟を掲げる関係者、お囃子を奏でる中学生、「花」を掲げる小学生についで、メインとなる花馬3頭が続く。

背中の「花」の中心にはそれぞれ別の飾りがついている。先頭馬には、神籬(「ひもろぎ」。常緑樹の木の枝。神の依り代となる)が、中馬(2頭目)には菊をかたどった造花(豊作を意味する)が、後馬(3頭目)には神社の社紋入りの幟がつけられている。

全員、すり足で歩調を合わせる。普通に歩くよりはるかに遅い。お囃子に合わせてゆっくりとリズムをとりながら道を進んでいく。沿道には付近の住民が集まり、行列を見守る。おそらくは参加している人たちの家族や友人なのだろう。村をあげてのお祭り、といった雰囲気で、日本の原風景を反映している。

途中で休憩を挟み、約1時間後、花馬一行は五宮(いつみや)神社に到着。祭りも後半戦だ。

五宮神社は1908(明治41)年に地元の南宮社・大平社・八幡社・熊野白山社・神明社という5つの神社が合祀され、生まれた神社だ。五宮の名はこれに由来する。「五」という数字はそれぞれの社を意味し、幟や「花」の飾りが五色なのはここから来ている。

五色も青・黄・赤・白・黒と色が決まっている。それぞれが、晴れ渡った空・豊かに実った五穀・輝く太陽・澄んだ水・肥沃な大地を表しており、五穀豊穣を祈り、神様からの恵みを感謝する意味がこめられている。

お囃子に合わせ、行列がゆっくりと進み出す。

地元の人たちが見守る中、花馬が道路を進む。

木曽路を進む一行。

小雨がそぼ降る中、行列は進む。

花取り

人々が今か今かと待ち受ける中、ようやく行列が境内に入ってきた。花馬3頭が本殿前に進み、祈祷を受ける。

行列は3周したあと、花馬3頭だけが間隔を空けて中央へと進む。

ドン!

太鼓の音が響くやいなや、周りを取り囲んだ人々が一斉に花馬に群がる。馬が暴れないよう関係者がなんとか抑えている。

人々の目的は「花」。台に差してあるだけなので簡単に抜ける。「花取り」と呼ばれる儀式で祭りは最高潮に達する。とはいえ、「花」が馬からすべて抜き取られるまで5分とかからない。あっという間の出来事だ。

持ち帰った「花」は、家の入り口に置けば厄除けになり、田んぼの畦道にさせば虫除けになるという。縁起物であり、神様が宿っているということなのだろう。

「花取り」後の馬は飾りが取られて急に寂しくなる。神馬から普通の木曽馬に戻る。興奮もおさまり、おとなしく立っている。役目を終えた安堵感が漂っているようにも見える。

地元密着型の祭りであり、馬を引いて行列して歩くというイベントは、かつて全国にあっただろう馬祭事の原型のようにも感じる。

主役はやはり馬。それも在来種の木曽馬たち。彼らが種として生き残っていることが、祭りの意義を押し上げている。この先も続いてくれることを願ってやまない。

五宮神社に行列が到着。祭りはクライマックスへと向かう。

行列は境内の広場をゆっくりと3周する。

これから起こることがわかるのか、馬も少しうるさくなってきた。

観客が「花取り」に参加。花馬の周りに群がる。

花取り後の馬は、装飾がなくなり寂しく映るが、役目を終え、ホッとしているようにも思える。