第17回 長野・木曽 田立花馬祭り その1
秋の木曽路を華やかに馬装された馬が行列とともに行進する。五穀豊穣と家内安全を祈願する馬祭事、それが田立花馬祭りだ。江戸時代から伝わる典型的な地域密着型の祭事で、主役が日本在来馬である木曽馬であることが、伝統を際立たせている。どんな祭りか紹介する。
祭りを彩る「花」
長野県木曽郡南木曽町田立(ただち)。毎年10月の第一日曜日、「田立花馬祭り」が開催される。
「花」と呼ばれる装飾物で飾られた木曽馬たちが神馬となり、JR田立駅の駅前広場から近くの五宮(いつみや)神社まで、総勢80人ほどの関係者と一緒に、行列して進む行事だ。発祥は江戸時代。290年前に書かれた地域の古文書にも載っている伝統の馬祭事だ。1993年には県の無形民俗文化財にも指定されている。
午前10時を過ぎると関係者が集まりだした。広場に隣接する消防署の倉庫には、三角の専用台の上に、置かれた鞍が3つ。鞍は「軍隊鞍」と呼ばれる軍馬に装着するもので、通常の鞍より大きくてがっちりしている。鞍の上には人が乗る代わりに円筒形の台が取り付けられている。
関係者が鞍上の台に、神社のおふだと五色の紙で装飾された130cmほどの竹串を差す。「花」と呼ばれる。その数は1頭につき365本。1年という歳月を表している。台に「花」を差し終えると、なんとも華やかな鞍ができあがった。
「花」を差す台が取りつけられた鞍。
一つの台に365本の「花」を差す。

3つの鞍が「花」で飾られていく。
花馬の完成
広場には、ガードレール越しに3頭の和種馬が繋がれている。ぽっこりお腹、胴長短足のがっちりした体型。木曽馬だ。花で飾られた豪華な鞍を彼らに乗せれば「花馬」の完成となる。
「ちょっと右に傾いてるよ〜」
馬の正面に立って、関係者がバランスを見ながら指示を出し、鞍を馬に乗せる。
「花」を背負った木曽馬は非常に華やかだが、全体で高さが3mを超え、バランスが悪い。見た目重そうだが、優秀な荷駄である彼らにはなんということもないだろう。それよりも感心するのはともかくおとなしいこと。風が吹くと「花」の飾りが擦れてザワザワと音がする。馬にとってはたまらないと思うが、意に介さない。
午前11時。白装束の関係者や小中学生の一団など行列に参加する人々が集合。中学生は笛や太鼓で、花馬の先ぶれとなるお囃子を奏でる。先生の合図でリハーサルが行われる。独特の音色に祭りの雰囲気が盛り上がっていく。
法被を着た馬引き役の女子中学生4人が登場。神馬を先導する重要な役回りだ。中2が担当なのだそうだ。4人で3頭とは中途半端だなとは思ったが、中2は学校に4人しかいないのだそうだ。地方はどうしても過疎化が進み、こういった伝統行事が次世代にうまく引き継がれていくか、かなり厳しい。それでも中学生のうちに参加し、興味を持つことは大切な布石になるはずだ。

本日の主役、3頭の木曽馬たち。
「花」でいっぱいの鞍を乗せて、「花馬」となる。

馬引き役の地元の中学生から餌をもらう花馬。

3頭の花馬の準備が整った。いよいよ祭りが始まる。