第15回 岩手県滝沢市・盛岡市 チャグチャグ馬コ 後編 その3
チャグチャグ馬コは馬事文化の中でも大きなイベントだが、中心となる世話役たちの高齢化、参加馬の減少と他の馬イベントと同じ悩みを抱える。東北の初夏の風物詩ともなっている貴重な馬文化。継続への努力が続けられている。
貴重なコンテンツ
チャグチャグ馬コ開催の2週間後、役員を集めた反省会があり、それにも参加させていただいた。貴重な観光資源でもあるこのイベントをいかに存続させ、さらに発展させていくか様々なアイデアが出た。
熱心な人たちはなんとか祭事を盛り上げようと、様々な新機軸を打ち出しているが、伝統とどう折り合いをつけていくか、という課題もあるという。
観光のコンテンツと考えれば、まだまだ潜在力はあると思う。まして盛岡は近年、外国人インフルエンサーの影響で人気が高まり、ニューヨーク・タイムズにもこの「チャグチャグ馬コ」のことが掲載されたのだそうだ。
円安で外国人観光客が増えつつある昨今、日本独自の馬文化はもっと注目されていい。そのためには、これを支える馬と人をいかに応援していくかは大きな課題だ。
自分のような者が記事にすることで、少しでも彼らの手助けになるなら、これからも見守っていきたい。

地元となんらかのつながりがあるのだろう、珍しく、外国人の参加者を見つけた。

庭先でみんなで馬装。かつては家の習俗として根付いていたはずだ。

街中でボロを拾うスタッフ。こういう人たちの協力も欠かせない。
アドバイザーとして
チャグチャグ馬コに参加する60頭の馬は、岩手県各地から集まっているが、主体をなすのは地元滝沢市の馬だ。特に大きなグループは2つ。昔から祭りに重種馬を提供している大坪厩舎を中心としたグループと、南部曲り屋を中心としたグループ。両者の馬だけでもおよそ半数近くを占める。
主要な人物とはその後も親交が続いている。
ただ70歳以上のオーナーが多く、次世代への引き継ぎが課題となっていた。そこで市からの助成も受け、2024年に若手(といっても主力は40代以上だが…)を中心として結成されたのが、「チャグチャグ馬コ伝承会」だった。
その組織からアドバイザーとして顧問を頼まれた。「自分でよければ…」ということで快諾した。
次世代へ向けた組織も生まれ、観光の目玉として滝沢市・盛岡市といった公の支援も受けているので、馬祭事としては、比較的恵まれている。知名度もあるのでますますの発展が見込めるイベントだ。
「フランス人は自分たちが作った重種馬に誇りをもっていて、それが他国の祭事に使われていることをすごく喜んでいました」
国際交流事業でチャグチャグ馬コの一団と一緒にフランスに行ったことがある関係者の弁だ。日本が誇る馬文化として世界レベルのコンテンツとなりうる。自分も微力ながら尽力したい。
馬と人、着飾った典型的な参加者。この衣装一式をそろえるだけでも大変だ。

田園地帯を進むチャグチャグ馬コの一行。日本の原風景ともいうべき姿だ。

チャグチャグ馬コ伝承会の会議。今後とも同祭事を存続させるべく、様々な意見が出た。