TAW Thoroughbred Aftercare and Welfare

第15回 岩手県滝沢市・盛岡市 チャグチャグ馬コ 後編 その2

本番当日、早朝8時。鬼越蒼前神社の境内は、多くの馬、関係者、観光客であふれかえっていた。前日のリハーサルと違い、緊張感が漂っている。一行はここから出発し、盛岡市・盛岡八幡宮までの道のりを約5時間をかけてパレードする。

行列は進む

7時半。曲り家を出て鬼越蒼前神社に向かう一行。撮影がてら一緒についていった。

神社に到着すると、すでに多くの馬が境内にいた。今日のパレードに参加する60頭近くの重種たちがきらびやかな馬服に身を包み、次々と社殿に詣でていく。

多少うるさい馬もいないこともないが、ほとんどの馬が静かに立っている。サラブレッドでこれをやったらたちまち阿鼻叫喚の事態になる。そもそもシャンシャン鳴る鈴がついた馬服など着せることができない。

馬の周りには観光客が群がり、カメラや携帯のシャッター音が響く。馬上の子供たちも戸惑いながらもカメラに向かって笑顔で手をふっている。

9時半、行列が進み出した。盛岡八幡宮までは14km、約5時間の行程だ。街中に入ると沿道は多くの人であふれていた。自分も装束を身につけての参加なので、風景には溶け込んでいるはずだ。

お参りを済ませた馬たちが続々と神社から出てくる。

神社を出た一行は、まずは近隣の田園地帯を進む。

街中の沿道では多くの人たちがパレードを見守る。

猛暑の中、途中リタイア

ふと気がつけば、隣を歩く馬の上で、小さな子がうつらうつらしている。きっと朝が早かったせいだろう。危なかっしいので思わず足をつかんだ。本人はそれでも眠ったまま。馬の動きに連れて右に左に体が傾く。つかんでみて初めて気がついた。紐で体が鞍に結び付けられている。なるほど、正しい判断だ。

1時間ほど歩くと最初の休憩に入った。行列参加者はみんな水分補給。陽が高くなるにつれ、気温はぐんぐん上昇している。乗り手も交代。くだんの女の子もきっと他の子に替わったことだろう。

再開してさらに1時間半歩く。だんだん足が痛くなってきた。ふくらはぎはパンパン。普段からよく歩く方だが、それにしてもこの炎天下、コンクリートの道を2時間以上はきつい。写真もほぼ撮り終えたので、2回目の休憩所のところで一旦リタイアして行列を離れた。

午後2時を過ぎた。車で先回りして、ゴールとなる盛岡八幡宮の境内で待つ。すでに駐車場には多くの馬運車が並んでいた。

やがて先頭の一団が到着。疲労の色は見えるものの、どの顔も無事に行事を終えた安堵感で笑顔になっている。お参りを済ませたのち、馬装を解き、馬に水を飲ませる。凄まじい勢いでバケツの水がなくなっていく。

馬運車の近くでシートを広げ、お重につまったハレの日の料理をつまむ家もある。遅い昼食に一家の参加者が集まる。こうして今年もチャグチャグ馬コが終わった。

途中の休憩所では必ず馬に水を飲ませる。

盛岡市の中心部をパレード。

盛岡八幡宮の駐車場。ここで初めて馬装が解かれる。