TAW Thoroughbred Aftercare and Welfare

第13回 静岡県牧之原市・さがらサンビーチ さがら草競馬大会 その3

伝統の草競馬、さがらサンビーチで行われてきた砂浜競馬も2020年に見舞われたコロナ禍には勝てず、開催中止。本格的な再開は2022年のことだった。その後の歩みを紹介する。

久々の観戦

早朝5時。ひと気のない海岸に最初の馬運車が入ってきた。臨時馬房が並ぶ一角へと向かう。朝のうちは薄曇りだったが、太陽が昇るに連れ晴れ間が広がった。海もたちまち青さを取り戻し、白砂青松へと景色が変わる。午前10時、会場には地元グルメが食べられる出店やキッチンカーがならび、気づけば多くの人が集まっていた。

人の賑わいは7年前と変わらない印象だが、馬の数が少ない。今年はポニー、中間種、サラブレッドなど30数頭の参加ということだったが、7年前は50頭近くいた。馬運車のプレートを見ると、静岡県、愛知県と近隣の県ばかり。関東や関西からの参戦は少ないようだった。

「馬を手放したり、参加する余裕がなくなったり、コロナの影響は大きいです。特にサラブレッドの頭数が少ないんですよ」

関係者の弁だ。午前中予選は10レース予定されていたが、実際には7レースしか行われなかった。特にサラブレッドは1レースだけで、予選も決勝も実質的に同じ馬の争いとなる。

乗り手の問題もありそうだった。うまく馬を乗りこなすジョッキーは少ない印象だ。7年前は地方競馬の元ジョッキーなどが騎乗していたが、そういった乗り手はほとんどいないように見えた。

それでも各地の馬イベントが廃れていく中、これだけの規模の草競馬大会は全国屈指だろう。ロケーションといい、観客の数といい、レースだけでなくいろいろ楽しめる。もう少し全国に知られれば、もっと観客も増えるはずだ。規模が大きくなれば、再び腕を撫す馬達者たちが、参戦してくれるだろう。

コロナ後の大会。ポニーレースが多かった。

PR大使

2025年4月27日、GWの始まりは快晴の空だった。コロナで一時中断するも2022年から再開して今年で3回目。自分も昨年から「さがら草競馬PR大使」を承り、正式に関わらせてもらっている。

コロナ明けは、5〜6頭だったサラブレッドが、今年は10頭を超える参加があった。駆け込みでの登録もあったそうだ。中部地方の馬のお祭りとして長く続いて来ただけあって、復活の兆しも見えてきた。

予選、決勝と同じ馬が何回か出ることになるが、それでも全15レースが行われる。

「ただいまより、サラブレッドによります決勝第4レース『牧之原市長杯』を行います」

アナウンスが響く。やはりサラブレッドによる決勝レースは大会の目玉だ。ぐるっと外ラチを囲む観客から拍手が起きる。

「キタサンブラックの子供も出走しています」

一瞬、会場がざわつく。知っている馬の名前が出るとそれだけで盛り上がる。

何を隠そう、自分が仲介の労をとった馬だった。

馬の名前はトーセンオリックス。4歳の鹿毛の牡馬。引退後、乗馬としてのリトレーニングを積み、今日の草競馬デビューとなった。

レースでは先頭から3番手で前を行く2頭を追ったものの、2周目に入るあたりで離されてしまい、そのままゴール。3着に終わった。

それでも無事に回ってこれたことに意義がある。これで草競馬に使える目処は立った。これからも毎年ここで頑張ってもらえると、嬉しい。

軽種馬の参加は少なかったが、なんとかレースができた。

自分が仲介の労をとったトーセンオリックスも元気に参加。