第13回 静岡県牧之原市・さがらサンビーチ さがら草競馬大会 その1

静岡県の中部、牧之原市にある海水浴場・さがらサンビーチで行われる草競馬は、世界でも珍しい砂浜競馬として知られる。海をバックにダートを駆け抜ける馬たちの模様を紹介する。
砂浜に現れたホーストラック
さがらサンビーチの広い海水浴場は、白砂青松の美しい砂浜で有名だ。ここに毎年4月末の日曜日、1周700mのダートコースが現れる。美しい景色の中、近郊はもちろん関東や関西からも集まった馬たちによる白熱したレースが展開される。「さがら草競馬大会」と名付けられたイベントには多くの馬と人が参加する。
筆者が初めて訪れたのは2016年4月に行われた40周年の記念となる大会。現役のJRA調教師として、来賓ということで呼んでもらった。
午前10時の開会式前からゴール手前の直線には鈴なりの人。数多くの屋台も出て、たいへんな盛り上がりだ。馬好きだけのこじんまりとしたイベントを想像していたので驚いた。快晴の天気もあってか参加者は主催者発表で2万人。レースに参加する馬は、サラブレッド、ポニー、中間種合わせて47頭。午前の予選、午後の決勝とレース数は18。これだけの規模は、馬産地・北海道の馬イベントに勝るとも劣らない。
もともとは、海水がサラブレッドの脚元に良い、ということでリハビリのためにやってきた馬たちを集めて、行ったのがきっかけだった。始まった当時は10数頭が参加する小さなイベントだったが、年々規模がふくらみ、ここまで大きくなった。

特設の馬房につながれた出場馬たち。引退競走馬や中間種など様々。

砂浜に集まった見物客。コースに沿って鈴なりの人が並ぶ。
深いダートに四苦八苦
夏場は海水浴場となるだけあってホームストレッチの砂は深い。全馬、結構砂に脚をとられている。中央競馬のダートより、はるかに走りづらそうだ。コーナーもかなりきつい。遠目に見ていても脚の4分の1くらいがめり込み、砂埃が激しく舞う。
向正面は、波打ち際。こちらは、重馬場のダート。固くなっているので急に走りやすくなる。スピードがぐっと上がる。ただし、250mほどしかないので、スピードに任せてコーナーに突っ込むと、大きく膨れるか、逆に内ラチのポジションを巡って激しく接触する。結構落馬がありそうだが、落ちても、砂でクッションが効くので、大きな怪我にはならないだろう。
距離は馬場を2周。1400mほどだが、砂の深さが尋常ではない分、スピードというよりはスタミナ勝負。2周目のゴール前ではみんな脚が上がってヘロヘロになっている。

コースの砂は競馬場のダートよりはるかに深い。

小回りのコーナーを砂を蹴立てて進んでいく。