第11回 福島県相馬市・相馬野馬追 前編 その2

出陣式を終えた一行は、そのまま祭りのメイン会場へと進む。陣笠・陣羽織の行列が到着する頃には、会場は多くの観客で埋め尽くされていた。
雲雀ヶ丘祭場
相馬小高神社を離れ、メイン会場となる5キロ先の雲雀ヶ丘(ひばりがおか)祭場へと向かう。侍たちは、馬に乗り、隊列を組んでここに現れることになっている。
祭場のメインは、1周約1000mのダートコース。おむすび型で、向正面とホームストレッチの直線は約300m。東京ドーム2個分の内馬場には芝生が生え揃い、「お成参道(おなりさんどう)」と呼ばれる直線300mほどの道が中央を貫く。向正面に入場口があり、騎馬はここから場内に入る。
ホームストレッチ側は高さ10mの山の斜面。巨大な自然のスタンドになっており、杭で仕切られた階段状の席が設えてある。かなりの人数が収容できそうだ。スタンドの中央、内馬場から続く登山道は、ジグザグ状に山頂へと続いている。曲がりくねったその様から「羊腸の坂」と名付けられている。頂上は、張り出し席になっており、本陣を模している。全体が見渡せる場所だ。
お成参道を中心に馬場内は2つに分かれる。スタンド正面の右の端に標葉郷、小高郷、中ノ郷、左の端に北郷、宇多郷の5つの郷の陣屋がある。
自然の地の利を生かしたりっぱなイベント会場だ。

イベントのメイン会場となる雲雀ヶ丘祭場は市内の中心部近くにある。

グラウンドから丘の上にある本陣へと続く「羊腸の坂」。

グラウンドにあるレーストラック。1周は約1000m。
騎馬の行列
お先乗りの騎馬を先頭に行列が中央の入場口からお成参道を本陣めざして進む。羊腸の坂の前に本部席があり、マイクが置いてある。
「○○隊、総勢○○騎、只今、到着しました!」
「ご苦労!」
お先乗りの威勢のいい言上。答えて検分役から声が上がる。
その後、お先乗りの騎馬が頂上の本陣まで羊腸の坂を一気に駆け上る。
「何やってんだ。あがれ」
怒号が飛ぶ。坂を目の前にして、馬がためらっているようだ。初出場の騎馬なのだろう。乗り手も初参加なのかもしれない。しばらく坂の入り口が人と馬でごったがえしていた。ようやく馬が坂を登り始めた。どうやら大丈夫のようだ。
行列が全員、場内に到着。螺が鳴り響く中、馬場潔の式が行われた。式典が一通り終わり、各騎馬が5つの騎馬会別に各郷の陣屋へと向かう。
次は初日のメイン「宵乗り競馬」となる。

粛々と中央の「お成参道」を進む各隊の騎馬たち。

羊腸の坂を上る騎馬。傾斜はかなりきつい。

グラウンドに作られた陣屋。各地区ごとに設けられている。